ロシアは今日も荒れ模様

ロシアは今日も荒れ模様
色々な雑誌・新聞に掲載されたものを加筆修正して、一冊にまとめてあります。その為か、まとまり感に少し欠ける一方、ディープな話題が目白押しの迫力あるエッセイです。ロシアの著名人(主に政治家・音楽家など)の裏話が面白いのはもちろん、ソ連崩壊の直前にあった様々な立場の人々へのインタビューも生々しく興味深いです。あと、かなり衝撃が走ったのは、ロシアのトイレに関するエピソードでしょうか。

そして、ロシアと言えばウォトカ。ロシア人がウォトカを飲み過ぎな件、及び無駄だった反アルコールキャンペーンについて、相当数のページが割かれてます。とにかく、あらゆる現象を酒を使って表現しようとする文化らしく、酒にまつわる小咄、慣用句など、ネタが尽きないようです。例えば、第一章の始まりには、こんな格言が・・。


「世の中に醜女(ブス)はいない、ウォトカが足りないだけだ」

「『このコニャックは南京虫の臭いがする』などと言うヤツをペシミストという。
『この南京虫はコニャックの臭いがする』などと言うヤツをオプチミストという」

ロシア人の「限界を自覚する感度」を下げるのに、ウォトカが大きな役割を果たしてるんじゃないかと言うのが筆者の考察です。それを裏付けるように、極限まで問題を放置プレーして、一気に大胆な変革に出る人々のエピソードが、随所に登場してました。

社会主義体制を皮肉る名文が多く引用されてましたが、下の文などは、ちょっと言葉を替えれば日本の状況を表すのに使えそうですね。

「失業者はいないが誰も働かない。誰も働かないが皆が給料を貰う。皆が給料を貰うが、何も買うものがない。何も買うものがないが、何とか食っていける。何とか食っていけるが、皆が不満を持つ。皆が不満を持つが、全員が『賛成』と投票する。」

(名越健郎編訳『独裁者たちへ!!』)

ナンシー関さんにしろ、米原万里さんにしろ、勿体無い事です。最近は、美人も才女も薄命なんでしょうか。